宇宙にあるブラックホールは、目に見ることができない天体です。星にはそれぞれ寿命があり、大きな恒星であっても燃え尽きると収縮すると考えられています。ブラックホールは、そのような星が燃え尽きて次第に収縮したときに誕生するとされています。このホールは密度が高く重力が強いために、1秒間に地球を7周するほど早さを持つ光ですらも放出することができません。もちろん目に見ることができないために、本当はどのような姿をしているかはっきりしたことは分かっていませんが、光はこのホールから出ることができないため真っ暗であり、周囲の光も重力で捻じ曲げられると考えられています。
ブラックホールについてはさまざまな理論を唱える人がいます。しかし太陽よりも大きな質量を持つ星は、最後には白色矮星と言われる直径が地球と同じほどまでの大きさに縮小された状態になり次第に冷却されて、一生を終えることになるという考えは一般的です。そして質量の高い星が燃え尽きるときには自分の重力で潰れることになると考えられていますが、これがブラックホールだというのです。1970年代になると天体から放射されるX線の研究が行われるようになり、人工衛星で天体から発生されているX線の観測からそれらしき見えない天体の存在が確認されました。その後にもいくつかの同様なものが見つけられています。
かつてはすべての物質が吸い込まれてしまうと考えられていましたが、1974年に発表されたイギリスの理論物理学者であるスティーヴン・ホーキングの理論では、最後には蒸発してしまう可能性があると言われています。宇宙で最大規模の爆発といわれているガンマ線バーストは、未知の天体から突然短時間にガンマ線が放射される現象ですが、それこそが蒸発の最後に起こる現象なのではないかと考えられているのです。
そのようなブラックホールは、地球でも小さいサイズのものを生成することができる可能性はゼロではないという考えもあり、それは2008年に使われ始めた高エネルギー物理実験の目的で作られた器械によってのものでした。1秒間に地球の7周半もの距離を移動する光すらも捕らわれたら出られないという、宇宙のモンスターのような全てを飲み込む真っ暗な穴が地球の実験室で作られたらどうなるのか、SF好きな人にとっては魅力的な話に思われるかも知れません。しかし現在のところその方法で作られる可能性は低いと考えられています。