スペースシャトルや人工衛星といった宇宙機は、高度400kmの軌道を飛んでいます。宇宙に行けば無重力だと思っている人がいるでしょうが、その高度400kmというのはわずかですが重力があります。それにも関わらず地上にスペースシャトルや人工衛星が落ちてこないのは、前方に進む慣性(遠心力)と重力が打ち消し合っているからです。慣性だけが働いている状況であれば、宇宙機は、まっすぐに突き進んで地球から離れていきます。しかし、僅かな重力が地上に向かって引っ張るので実際の進行方向は斜め下に向けて飛びます。この動きを自由落下というのですが、地球というのは丸い星ですから自由落下を繰り返していると地表に沿って円を描くような軌道で飛ぶことになります。このため、宇宙機が地上に落ちることはありません。こうして重力の影響を無視できる状態が、微小重力環境と呼ばれます。
この微小重力環境にあるスペースシャトルの内部では、無重量状態にあります。無重量を説明すると、物の重さがないということです。重力がない無重力も物の重さがなくなりますが、それと同じような状態になっています。無重量状態になる微小重力環境では、人体への影響もでてきます。宇宙に長期滞在した宇宙飛行士が、地上に帰ってきたときに自力で歩くことができずに担架で運ばれていますが、それは無重量であれば筋肉や骨が自分の体重を支える必要がなくなり衰えてしまうからです。
また重力がある状態では血液は下半身に溜まっているのですが、無重量状態では上半身に移動します。そのため頭部や首の血管が拡張して、嗅覚や味覚が鈍くなる傾向があります。これは呼吸においても同様で、無重量状態では空気の流れがなくなるので二酸化炭素が顔の周辺に留まってしまいます。ですから、宇宙機では空調を使って空気の流れを作っています。
このように地上とはまるで違う微小重力環境を利用して、様々なResearchが行われています。植物の成長がどのように変化するのかとか、微生物の繁殖力がどうなるのかといったことです。そうした結果で画期的な発見がなされることもあり、医薬品の開発も行われています。
そんな微小重力環境ですが、高度400kmまでいかなくても体験ができます。それはパラボリックフライトといって、放物線を描くように飛行することで自由落下運動になり無重量状態をつくれるからです。とはいっても、飛行機で上がれる高さには限界がありますし、そのまま地上に突っ込めば事故が起きるので無重量になるのは数秒から数十秒程度だけです。