太陽系の惑星の中でも最も太陽に近い場所を公転している水星は、地球上から観測しやすい金星や火星とは異なり、あまり馴染みのない惑星です。しかしその特徴はたいへん興味深いものがありますので、水星についてもっと詳しく知るためにも概要紹介をしていきましょう。

水星の大き さは赤道面の直径はおよそ4,879kmで、木星の衛星「ガニメデ」や土星の衛星「タイタン」よりも小さく、地球と比較すると約38%となっています。恒星である太陽に最も近く最大離角も28.3度と小さいことから、地球上からの観測は日の出前や日没直後のごく僅かな時間のみ可能です。見かけの明るさは大きく変化し、最も明るく見えるときにはマイナス0.4等まで光り輝きますが、暗いときには5.5等相当にまで暗くなるという特徴を有しています。自転の速度はきわめて遅く58日、太陽の周りを1周する公転周期は88日です。

前述のように地球から観測する場合には水星は太陽の付近を動いておりますので、太陽光が邪魔になりその姿を見ることが難しいという特徴がありますが、太陽から最も離れる時期を選ぶと見つけやすくなります。それでも最大でも高度が20度程度しかありませんので、東西に開けていて高い山や建物の少ない場所が観測に適していると言えます。

地球と同じタイプの岩石質の惑星で、体積の割合は地球と比較すると5.5%しかありませんが、質量の実に70%前後が鉄やニッケルなどの金属でできていると考えられています。重力の小さな惑星ですので、大気をとどめておくことができず宇宙空間に放出してしまうため、ほぼ真空の状態です。ただし、きわめて希薄ではあるものの、水素やヘリウム、酸素などが確認されています。表面には大小多くのクレーターが存在していたり滑らかな面が存在したりと、地球の衛星「月」と似ている環境です。表面温度の平均は、恒星である太陽に最も近いことから452K(179℃)と高温ですが、太陽光の当たらない日陰の部分は低温であり、氷が存在していると見られます。

詳細な調査については、地球からの距離が遠いことなどから難しく、探査機による調査回数もその他の惑星と比較すると多くはありません。それでも、1973年に初めての探査機である「マリナー10号」が打ち上げられ表面の特徴を捉えた写真が多く撮影されたほか、2004年に打ち上げられた「メッセンジャー」がより詳しい調査を行うなど、謎の解明が進められています。